ごはんと同じくらい大事なもの

ごはんを食べるのと同じくらい生きるために大事なものたち。

ゲームレビュー:Orwell: Keeping an Eye On You 個人情報が暴かれる監視社会でどう在るかを問う物語

f:id:jo_ji:20210523004507p:plain

こんにちは。譲治です。
今回は監視社会を描いたゲーム『Orwell: Keeping an Eye On You』について、感想を書いていきたいと思います。

テーマとしては以前プレイした『ヘッドライナー:ノヴィニュース』と近い部分があると思っていて、あちらは世論操作や扇動によるものでしたが、本作では監視社会というものを通じて「情報」をもとに「考える」ことについて訴えかけてくるように感じました。

www.pastime-log.com

Orwellってどんなゲーム?

f:id:jo_ji:20210523011343p:plain

作家ジョージ・オーウェルという人物を知っているでしょうか?
監視社会を描いた「1984年」や恐怖政治を題材とする「動物牧場」といった全体主義的な思想に対する批判的な小説を書いた人物です。

そのジョージ・オーウェルから名前を取っていることからもわかるように、本作『Orwell』は監視社会を描いています。
町中に設置されたカメラによって街の人々の様子が見られているだけでなく、タイトルにもなっている監視システムOrwellによってプライベートまでも暴かれていきます。

OrwellとはWebページや通話やチャットの履歴だけでなく、端末自体を操作してスマートフォンやPC内の情報を集めるようなことも可能とするシステムです。
プレイヤーはOrwellを操作する「調査員」に選ばれ、アドバイザーも兼ねた「指導員」と一緒に情報を集めていくことになります。

f:id:jo_ji:20210523013618p:plain

ゲームの画面は上の画像のように、右側にWebなどの情報、左側に個人情報がストックされていくようなデザイン。
これがOrwellの操作画面という設定で、自分自身が本当に監視システムを使用して情報を集めていくような感覚が得られます。

f:id:jo_ji:20210523014130p:plain

プレイヤーがするのは、このシステムを使用してゲーム冒頭で発生する事件の犯人に関わる情報を集めること
犯人を見つけることではなく、あくまでも情報を集めることです。
情報を集めることで、その情報に則って警察や政府が動き、犯人を追い詰めていくことになるため、どのような情報をシステムへ提出するのかが重要になります。
何も考えず片っ端から情報を提出することも可能ですし、それだけでもゲームは進行していくため、そこまで考えずに進めることも出来るといえば出来ます。
ただ、一度それで良いのかを考え、自分で事件を推理し始めると、そのような雑な調査はできなくなっていくんじゃないかと思いますね。

ゲーム自体は7、8時間で終わるので、気軽に遊べるゲームです。
Steamで遊ぶためにはPCが必要ですが、グラフィック的にもそこまで求められるものではありません。
また、iOS版も配信されているため、スマートフォンで遊ぶこともできます。
日本語は少し怪しいところがあり、読む側が解釈してあげないといけないところもありますが、そこまで問題なく理解することができると思います。

感想


www.youtube.com

舞台となる国ザ・ネイション。
プレイヤーは「調査員」として選ばれてはいますが、ザ・ネイション国民ではありません。
Orwellの調査員となるためには、国民ではないのが条件となっているためなのですが、架空の国に住んでいる人はいませんし、これによってプレイヤー自身が本当に調査員に選ばれたような感覚でプレイすることが出来たように思います。

f:id:jo_ji:20210523112726p:plain

ゲーム開始の段階からプレイヤーを『Orwell』の世界に入り込ませようという意図を強く感じるものになっていて、注意事項への同意などセットアップ過程から力が入っていることがわかりますよね。
これは世界観を表すだけでなく、ゲームシステムとしても上手く機能しているのですが、それは実際にプレイしてみてもらいたいですね。

説明でも書いた通り、『Orwell』は考えさせるゲームです。
自由に閲覧できる権限を付与された調査員として、主要人物の職業、私生活、過去の問題などを明らかにしていくなかで、その情報をもとに事件の真相を推理していきます。
その推理自体も考えることに繋がりますが、次に訪れるのは「どの情報を提出するか」という思考です。
このゲームでは自分自身が犯人を追い詰めて逮捕するような動きは出来ません。
プレイヤーが出来るのは、情報を集めて提出することだけ。
ですが、その情報をもとにザ・ネイションの人が動くのです。
正しい情報を渡すことができれば問題ないのですが、誤った情報を渡してしまうと無実の人が傷つけられてしまうことにもなりかねません。
多くの情報を閲覧できるという立場を理解し、真実を追いかけることが求められるのです。

そして最後、ゲーム開始時から一貫して表現していた「あること」がプレイヤーの前に提示されます。
監視社会に限らず、得た情報をどのように扱うのかは実社会においても重要なことです。
またゲームというものを通して、自分にとっての正しさとは何かを考えさせられるような問いかけも表出してきます。

ただ、何度も書いているように自分にできるのは、情報を提出することだけ。
初回のプレイだったこともあり、もどかしさを強く感じる事になりました。
もう少し上手く立ち回れたのではないか?なんとか助けることが出来たのではないか?
自分が提出した情報によって、そんなことになるなんて思わなかった……という後悔をすることも何度かありました。
最後の最後まで、わかっていても上手くいかないことがあり、心残りもありますが、全てにおいて距離感がちょうどよく、仕組みとしても面白い……よく出来たゲームだと感じましたね。

さいごに

f:id:jo_ji:20210523115232p:plain

全編通して派手なところはそれほどなく、比較的淡々と進むゲームではありますが、それでも感情が振れる瞬間は多々あります。
世界観に興味を持てる人や、推理することが好きな人であれば、満足できるゲームだと思いますのでぜひ遊んでみてもらいたいですね。

続編というか、シリーズ作品として『Orwell: Ignorance is Strength』というものも販売されています。
Ignorance is Strengthというのもジョージ・オーウェルの「1984年」からの引用で、「無知は力である」という意味。
こちらもどのように話が展開されていくのか、気になる作品です。

今回はSteamでのプレイでしたが、説明で書いた通りスマホ版も出ていますし、少しでも気になった人はプレイしてみてもらいたいですね。
ちなみにスマホ版の方が安いです。