ARGというものをご存知だろうか?
代替現実ゲームと呼ばれるそれは、日常世界をゲームの一部として取り込み、現実と仮想とを交差・交錯させる遊びだ。
仮想世界だけで完結する遊びではなく、現実の世界を取り込みながらプレイするという特徴もあり、段々と日常を侵食していくような、一風変わった味わいが楽しめる。
今回は私が最近触れたARGである『ネトゲ異常案件』について、知識や経験の段階に合わせて紹介していく。
ただし、少しでも気になったらその時点でこちらのページへ進み、プレイされることを推奨する。
ARGを知らない・遊んだことがない
冒頭で触れた通り、ARGとは代替現実ゲーム(Alternate Reality Game)のことだ。
定義は正直曖昧だが、
- 現実世界を舞台とした仮想アベンチャー
- プレイヤー(またはプレイヤー同士)の能動的な行動によりゲームが進行する
- インターネット・テレビ・ラジオなど様々なプラットフォームを用いた情報収集が求められる
- 様々な謎を解き明かすことで真相へとたどり着く
というような要素を持っていることが多いように思われる。
歴史を遡ると1988年に実施された『ネットゲーム'88』など、古くから遊ばれていたものだとわかるだろう。
ざっくり当時のARGを見てみると、論文やポスター、映像などに散りばめられた手がかりをもとに、情報を集め、電話やFAX、電子メールなどを用いつつ、実在の場所にも足を運び、隠されたストーリーを解き明かしていく……というような形式のようだ。
インターネットの発展した現在は更に拡張され、実在のインターネットサービスやSNSを用いることも増えているとのこと。
情報収集や謎解き、プレイヤー間のコミュニケーションによってゲームが進行していくゲームとインターネットの相性が良いのだろう。
このように普段何気なく使っているものや実在の場所などをもとに謎を解き明かしていき物語を進める体験は、デジタルゲームや小説、映画のようなエンタメだけでは体験しにくい面白さを我々に届けてくれる。
ただし、現実の生活の中で普段遣いしているものを使用してゲームを解いていくという特性のため、ARGをプレイするには少し注意が必要にもなってくる。
それは現実生活への影響だ。
このホームページは何か隠されていないか? この動画は実は何かを訴えているでは? このポスターは別の見方があるのでは? この数字はどこかの地名へ変換できないか? などなど。
パズル系のゲームをプレイしたことのある人であれば似たような体験があるだろう。
それが現実のいたるところで起こり得る。
ARGを知らない貴方は幸せ者である。
なにせ影響を受けないまま、日常を生活できるのだから。
ただ、知りたいのであれば、ぜひ今回紹介するものをプレイしてみてもらいたい。
Vtuber失踪案件を知らない・遊んだことがない
Vtuber「夢見えかと」の活動がある日突然停止。
そして送られてきた謎のDM。
ただの活動停止ではなく、何らかのトラブルに巻き込まれたのではないかと疑った依頼人から、安否確認と所属している芸能事務所についての調査を頼まれ、実在するサイトを調べることになり……。
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とりあえず最新作から遊ぶというのでも良いが、公式でも触れられている通り「前作をプレイしているとより楽しめる」ようになっている。
ゲームとしては独立しており、前作をプレイしてないと最新作が遊べないというわけではないため安心してほしい。
話など少し繋がっている箇所があるため、先に触れておくと2作目がより楽しめる。
細かいネタなどでゾワゾワできる、くらいのオマケ要素だと思っておいてもらっても構わない。とりあえず一旦は。
それと個人的におすすめなのが、ゲームシステムの練習としてプレイするという捉え方だ。
ネトゲ異常案件の方がプレイしやすくなっているという感想も聞くが、個人的にはシステムとしては1作目のほうがシンプルなので、そちらでゲームシステムを理解し、その上で2作目に進む方が引っかかりなく楽しめるのではないかと思っている。
ただ、1作目はある意味不親切な箇所もあると思う。
独力で調査を進められるのであれば良いが、行き詰まるのであれば公式のヒントを駆使した方が良いだろう。
また、他の調査員に協力してもらったり、場合によっては先に調査を終えた者の調査レポートに触れてみるというのもありかもしれない。
どこまで協力を仰ぐかは人それぞれだが、個人的には詰まって諦めるよりはとりあえず進んでみて「どのように遊ぶものなのか」を覚えた方が今後楽しめるのではないかと思う。
ちなみに、記憶力に相当の自身がない限りは、情報をしっかりとメモに書き留めていくことをおすすめする。(私はExcelを駆使した)
そのため、少し触れてみて楽しめそうであれば、腰を据えて遊べる環境を作るのが良いだろう。
ネトゲ異常案件を知らない・遊んだことがない
ようやく今回の本題『ネトゲ異常案件』の話だ。
もし貴方が遊ぶつもりだと言うのであればこんなところで時間を浪費するのではなく、一刻も早くネトゲの異常を解き明かしてほしい。
ネットゲームにおける不正プレイヤーの調査を依頼されたことが今回の案件の発端である。
株式会社バンデットが運営するMMORPG『アカシックオンライン』。
そのゲーム内で不正行為を行うチートプレイヤーのアカウント情報の特定を依頼され、その調査を進めることになる。
調査方法は実在するホームページのサイト内検索。
怪しい単語を入れることで情報を集めていくのが基本的な流れだ。
普通であれば公表されている情報のみがヒットするはずだが、潜入調査を行った調査員によって非公開データにもアクセス可能な状態になっている。
これを利用して、バンデットが隠している情報を引き出していくのだ。
表向きはよくありそうなゲーム会社。
しかし、前作の要領で調べて行くと出てくる不思議な情報たち。
チートプレイヤーに限らず、長い事止まっているメンテナンスやイベントの不具合、不可解な事件に消息不明の調査メンバー、猫の画像に古いインタビュー記事……。
これらを組み合わせ、情報を抽出し、必要な文字列を探し当てていく体験は前作と変わらず面白く、追加されたツールを用いることで得られそうな情報にあたりを付けていくのは少し思考を横に広げるような感覚があって、見事探し当てたときの気持ちよさはひとしおだ。
前作にも当てはまることではあるが、真相へ近づいていく感覚は脱出ゲームなどにも近いものがある。
または体験型のミステリーとも言えるかもしれない。
怪しいと感覚的に思っていたことが、情報を集めていくことで究明されていく。
また同時に思っても見なかった情報が登場し、推理を大きく狂わせる。
実在するホームページを実際に調べていくことで、現実と仮想の境界が曖昧になっていくような感覚に陥るのも面白い体験だ。
前作から引き続き面白い『ネトゲ異常案件』は2025年4月20日にリリースされたばかりなので、ぜひ早いうちに触れてほしい。
実際に触れてみれば、私の言いたかったことがすぐに感じられると思う。
全部遊んだことがある
上記の制作を行ったSIM3は第四境界の『かがみの特殊少年更生施設』にインスパイアされたと公表している。
近年日本のARGといえば第四境界と言えるほどの知名度。
その名前を知らない人でも『人の財布』、『事故物件鑑定士試験』、『Project:;COLD』などの名前を聞いたことがある人もいるのではないだろうか?
今回挙げた2作をプレイ済みなのであれば、更に他のものに触れてみるのも良いかもしれない。
……え、全部やったって?
おすすめのARGを教えて下さい。お願いします。
さいごに
説明が難しい遊びではあるが、謎解きや脱出ゲームが好きな人にはおすすめできるゲームだった。
ここまで読んでまだプレイしていない人は居ないだろうが、もし未プレイであればすぐに始めることをお勧めする。
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上でも書いた通り、本当に面白く、本当に影響され、しばらくは簡素なホームページを見ると疑いの目を向けるようになっていました。
また、プレイ中は段々と真相に近づいていく感覚のせいか、あと少しだけ……あと少しだけ……と夜な夜な調査を行って寝不足の日々を過ごすことに。
この睡眠不足も何かの計画の一部なのでしょうか……?
そんな生活を歪ませるような本作を作ったのがSIM3という人物1人によるというのが驚き。
本当に1人なのか疑わしいレベルで面白い体験でしたね。
「案件No.002」というように番号を振っていることからも、最後のあれこれからも今後も続いていくシリーズなのでしょうし、3作目以降も期待して待っていようと思います。
ちなみに以前レビューを載せた『Inscription』もある種のARG要素を含んでいました。
ゲーム内で得た情報を元に、ゲーム外で展開していく形式で、興味深い作り……まぁ、ゲームの真相をゲーム外で明かすのはちょっと好みと違ったのですが。
今後も何か良いARGを見つけて触れてみたい……。
そう思わせてくれる体験だったので、もしおすすめがあったら教えてもらえると嬉しいです。