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ゲームレビュー:ポケットモンスター バイオレット 優しいオープンワールドで自分だけの宝物を探す冒険のお話

こんにちは。譲治です。
先日公開した2022年に遊んだゲームベスト5の記事でも取り上げた『ポケットモンスター バイオレット』。クリアしてから1ヶ月くらいが経ってしまいましたが、感想をまとめておこうと思います。
そちらの記事にも書いたのですが、「宝探し」という目標をしっかりと軸にして話が進んでいくストーリーの構成がすばらしく、またゲームプレイの面でも遊びやすいよう考えられたオープンワールドの作りがとても良い出来だったと感じています。それらの要素について、もう少ししっかりと説明できると良いかなと思っています。

ある程度は避けようと思っていますが、ネタバレも含まれてしまうと思いますのでその点はご了承ください。

ポケットモンスター バイオレットってどんなゲーム?

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公式名称としては『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』。2022年に発売されたポケモンシリーズの最新作です。

物語の舞台はパルデア地方。主人公は学園の生徒となりつつ、オープンワールドとなった広い世界を舞台に、ライドポケモンを乗りこなして冒険をすることになります。

その冒険の目標は「宝探し」。宝というのが何を指すのか、それも含めて冒険の中で探し求めるという結構無茶振りな課題……ですが、宝物を探して世界を巡って様々な人の宝物にまつわるストーリーを辿っていき、自分にとっての宝物を見つけ出すというストーリーになっています。

さらっと書きましたが、オープンワールドというのも重要なポイント。ジムのようなゲームのストーリー上行くべき場所はありますが、その順番は明確には決まっていません。そのため、最初にどこへ行っても、どの順番でもOK。もちろん強いポケモンと遭遇してしまうこともありますが自己責任。むしろそれさえも自分なりの冒険の1ページになっていくわけです。

参考までに書いておくと、私がクリアするまでにかかったプレイ時間は約25時間ほど。クリアで満足してしまったので、その後の追加要素などはプレイしていません。人によっては15時間程度でクリアしたという話も聞きますし、探索していたら何十時間プレイしてもストーリーが進んでいないという人もいるみたいですので本当に人それぞれなんじゃないでしょうか。

ストーリーの軸となる宝探し

本作には3つのストーリーラインが存在しています。
1つ目はネモを中心としたポケモンチャンピオンを目指す「チャンピオンロード」、2つ目はペパーを手伝ってヌシを追って特別なスパイスを見つけ出す「レジェンドルート」、そして3つ目がカシオペアを手伝ってスター団の解散を目指す「スターダスト★ストリート」です。

どれから順番にやらなければならないといった縛りはありませんし、分岐があるわけでもありません。それぞれ目標となるジムリーダー・ヌシ・ボスがいるので、それらを好きな順番で倒していけばお話が進んでいく作り。直線構造のストーリーではなく、複数の重要な点を自由に繋いでいくような構造と言えます。

3つのストーリーがあると書きましたが、本作を貫く重要な軸である「宝探し」の要素がしっかりと込められているのが素晴らしいポイントですよね。
例えばチャンピオンロードは最上位のポケモントレーナーの称号であるチャンピオンランクを獲得したネモが中心となる物語。

ツイッターなどではヒソカ扱いされるなど闘争を求める狂戦士ぶりがネタにされることも多いのですが、実際は同等の強さを持ったトレーナーがいないため全力のポケモンバトルができない孤独な存在でもあります。チャンピオンロードはそんな彼女が本気を出せるライバルを見つけるための物語で、そのライバルとのポケモンバトルこそが宝物だと言えるんじゃないでしょうか。

ペパーの手伝いとしてヌシを倒していくレジェンドルートや、スター団の5つの組を倒して周るスターダスト★ストリートも同じようなことが言えます。主人公が関わることで中心となる人物の宝物に触れていく……。「宝探し」という軸をしっかり意識し、強固にするためのストーリー展開が強く意識されています。

物語自体もシンプルながら王道の作りでありながら、「宝探し」という本題からずれることなくまっすぐ向かい合った素晴らしいお話だったと感じましたね。

個人的な感想だとスター団の話も好きなんですよ。
ネモが学園の表面だとしたら、スター団はその裏側とも言えると思うのですが、全員が全員日の当たる場所でまっすぐ生きていけるわけではなくて。いろんな事情で集まった人たちが、仲間になってその集いを大事にしていく話というのはやっぱり刺さります。

まぁスター団のポーズはめちゃださなんですが……ストーリーを進めていくと、そんなに悪くもないかな……みたいな気持ちにもなるのが不思議。

学園モノという枠組みだからこその別視点の物語でもあるので、全部楽しみ尽くしてもらいたいなと思っています。

優しい設計のオープンワールド

話が大きく変わりますが重要なので本作におけるオープンワールドというものの扱いについても話をしていきましょう。

オープンワールドというと『ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド』や最近だと『ELDEN RING』などを思い浮かべる人が多いのでは?と思っているのですが、それらはどのような作りだったか思い出せるでしょうか?

オープンワールドなので(重要な箇所にはロックがかかっていたりもしますが)最初から好きなところへ好きなように行くことができる設計になっていましたよね。自由度の高さという点で考えると、どこへでも行けるというのは自由度の最上級。この世界を好きに遊んでくれ!というメッセージを受けて、ユーザーの意思で目的地を定めて冒険することが出来ます。
ですが、「好きな場所へ行っていいよ」と言われたときに本当に自由に遊ぶのって実際はめちゃくちゃ多い選択肢から自分の意思で選択して道を切り開く工程。これ、心理的な負荷が高くなってしまいがちなんですよね……。

では本作はどうなっているかというと、ざっくりとした2択で冒険を始めることができるようになっているんですよね。
上の画像を見てもらえるとわかると思うのですが、パルデア地方は中央にパルデアの大穴と呼ばれる進入禁止エリアがあり、それを囲むように大地が広がっています。つまり、ドーナツのような地形になっているというわけ。スタート地点は一番南のエリアなので、そこから東西のどちらに進むか、というシンプルな2択から選ぶだけなんですよね。
心理的なハードル、特に冒険を始めたばかりのユーザーにとってもっともストレスになる最初の1歩をわかりやすい形で提示してくれている。これが、本作のオープンワールド地形における最高のポイントだと感じています。

最初の1歩さえ踏み出せれば後はジムリーダーやヌシなどを目標に定めて、自分なりに冒険を進めていけばOK。北に行くほど強いポケモンがいるので、まずはパルデアの大穴の周囲を回ってから、北上していくというのがわかりやすいルートなんですが、左右を行ったり来たりしてもいいですし、本当にぐるっと回っても良いという作り。大枠となる地形でここまでわかりやすくできるというのは素晴らしいですよね。

まぁ最初から色々すっ飛ばして北限を目指しても良いわけですが。
それもその人なりの冒険になりますからね。

全てを包む「自分だけの宝物」体験

「宝探し」を中心にした物語と、自由度の高さと最初のハードル下げを共存させたオープンワールドについて書いてきましたが、最後のポイントとして書きたいのがそれらが組み合わさったときに生まれる「自分だけの宝物」体験です。

途中でも触れましたが、本作はオープンワールドなのでどこへ向かおうと自由です。最初から強敵の多い北へ向かっても良いですし、ピクニックをして好きなポケモンたちとゆったり過ごすのも良いでしょう。私は出来ていませんが、マルチプレイで友人と一緒に冒険して周るのも面白いと思いますし、ひたすらポケモンを捕まえまくっても良いと思います。レイドなどの要素もあるので強いポケモンを手に入れるためにレイドを繰り返すのも遊び方の1つです。
自由度の高いオープンワールドの世界で、自分の好きなように遊んでいくなかで得られた体験は、他の人が遊んでいるときに得た体験とは全くの別物になっているはずです。

3つのストーリーとして説明したお話を思い返すと、主人公が関わりはしましたが、その実中心となる人物は主人公とは別のキャラクターでした。それはつまり、主人公の物語はまた別のところにある、という捉え方もできるんじゃないでしょうか?
3つのストーリーを行き来しながら、パルデア地方を好き勝手冒険しながら体験したできごと全てが主人公の物語なんじゃないかと私は思っています。

気になったポイント

本当に良い物語というか体験で、ありがとう!と言いたいところなんですが……いや感謝はしっかりしますが、諸手を挙げて褒められるかというとそうではないのが本作……。

何と言ってもバグが多い……。

カメラが地面を抜けたり、ライティングが狂っていてチカチカしたりは日常茶飯事。うちは上の画像のようにシシコがいたるところに登場するような状況になってしまいましたし、似たような現象に遭遇している人のツイートなんかも見かけました。建物のコリジョンの内側に入り込んでしまうような現象も見かけましたし、他にもたくさん……。
いえ、多少のバグは別に良いんです。そんなのにいちいち文句を言っていたらゲームを楽しめませんから。とはいえ、ゲーム進行にそこまで影響しないくらいの細かいバグが本当にたくさんあって製品としての品質は高いとは言えません。正直に言うとこれらの不具合のせいで没入感は削がれていきます

本当に良いゲームなのにこういうところで現実に引き戻されるのがもったいないんですよね……。

話は変わりますが、学園モノとしての設定もそこまで活きていなかったように感じています。というのも、学校に行く必要があるのが最初と終盤のイベントくらいなので学校に所属しているという認識がほぼ無いままクリアを迎えてしまったから。

せっかくの学園モノなので、定期的に学校に行くとかイベントがもっとあったら良かったのかなと。少なくとも私はクリアまで進めても学生であることの意味を感じませんでした。

さいごに

最後に気になった箇所についても触れましたが、それでも素晴らしいゲームであることは疑いようがありません。自分だけの体験を宝探しになぞらえて冒険の中で紡いでいくというのは、本当に特別で面白いものです。

私の例を挙げると、中盤に行ったジムのアオキさんにやられてポケモンのレベル上げをしたことや、ふらりと行ったオージャの湖でボコボコにやられてほうほうの体で逃げ帰ったこと。スター団のボス戦ではスターモービルに毎回苦戦していたことなどがすぐに思い出せますね。それらのせいで最終盤に連れているポケモンの選定し直しがあって、そこまで苦楽をともにしていたポケモンと別のポケモンのどちらを選ぶかで悩んだことなども覚えています。
似たような経験をした人もいるとは思います。ですが、ファイアローを外すかどうかで悩んだ体験は私だけのものですし、私の『ポケモン バイオレット』の物語の一部です。

さらには思い出すだけでなく、苦戦した場所やお気に入りのポケモンとのスクショ、どういう順番でジムなどを回ったか、そういった話を友人とすると違いがあって面白いと思います。
自分だけの宝物を見つける体験ができるゲーム『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』、おすすめです。