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ゲームレビュー:FORSPOKEN しっかりとした素材を料理しきれなかった一作

最初に発表されてから3年近くが経過し、ついに発売された『FORSPOKEN』。
年末には体験版も発売されましたし、その記事を書いたりもしました。

世間的には評価がそこまで高くないのですが、実際にプレイし、クリアしてみてどう感じたのかを主観的な評価として書いていこうと思います。
色々書くのでネタバレもあります。ご了承下さい。

FORSPOKENってどんなゲーム?

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『FORSPOKEN』はスクエア・エニックス、そしてルミナスプロダクションズ開発のアクションRPG。主人公のフレイ・ホーランドはニューヨークにいたのですが、不思議な現象に巻き込まれ、気がつけば異世界であるアーシアに飛ばされてしまいます腕にはカフという意思を持った腕輪が巻かれていて、その力を借りつつニューヨークへ帰る方法を探してアーシアを旅することになります。

このアーシアという世界は美しい風景でありながらも、異形のモンスターが跋扈する場所。かつては栄えていたようですが、今は滅亡の危機に瀕しています。

ニューヨークに帰りたいという、自分の願望を第1に考えるフレイ。
しかし、アーシアを救うことができるのはフレイしかいないという現実。

知り合った人たちの気持ちに答えるのか、それとも無視してニューヨークに戻る手段のみを追い求めるのか。そういった個人の願望と求められる役割との合間で揺れながら、フレイはアーシアを駆け回ります。

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そんな『FORSPOKEN』の目玉は魔法を使った戦闘、そして魔法パルクールと呼ばれる高速で自由度の高い移動です。

魔法を使ったパルクールは、木を躱し、段差を飛び越え、水の上を滑り、時には空を飛びます。スタミナの概念があるのですが、特定の魔法を覚えたり、うまく操作できると無限に走り続けることもでき、世界を駆け回るのが面白くなっていきます。

当然魔法はバトルでも主要な要素。
最初は土属性の魔法しか使うことができませんが、炎や水と言った他の属性の魔法も使うことができるようになっていきます。

また、敵の攻撃を躱すために魔法パルクールをうまく使うことになり、パルクールを使った気持ちの良い戦闘を意識して作られていることが伝わってきますね。

異世界へ転移した主人公のフレイが、魔法を使ったパルクールやバトルを繰り広げ、アーシアを救うのか、それともニューヨークに戻るのかに悩みながら異郷の地で猫を撫でるゲーム。それが『FORSPOKEN』です。

対応機種はPS5とPC(Steam、Epic、MS)。
クリアまでにかかった時間は、難易度やプレイスタイルにも夜と思いますが、私はノーマルで20時間程度でした。
難易度を下げれば10時間程度、もっと探索すると30時間くらいはかかるんじゃないでしょうか。

物語について

説明でも書きましたが、主人公のフレイはニューヨークに住んでいた若い女性です。ただ、その人生は順風満帆ではなく、お金にまつわるような問題も多く、「いつかここから抜け出す」という気持ちだけで生きていたような状態。

そんなときに出会った謎の腕輪の影響で、別の世界であるアーシアに転移してしまうことに……。
別世界での冒険の中で自分が特別な存在であることを知り、段々とアーシア全土にかかわるような大きな物語に身を投じることになっていきます。

が、終盤に向かうとその物語に厚みが無いことが露呈していきます。
フレイはもとの世界に戻りたいと言い続けますが、実際にその前に取っていた行動は「別のどこかへ行きたい」というもの。もちろん自分の飼っていた猫のことを考えるとニューヨークに戻りたいというのもわかりはしますが、アーシアに来て、再評価されている今は概ね自分のやりたいことができているようにも思われます。

そう考えるとフレイの悩みなんてものはどこにも存在せず、むしろ願いがかなった状態だと言えるでしょう。

もちろん、フレイの悩みについてはそれで全て解決!というわけではありません。
物語が後半に向かうにつれて、話を駆動するための要素がタンタと呼ばれる4人の女王がなぜ乱心したか、そしてフレイの出自の秘密へとシフトしていきます。自身のアイデンティティの確立というと、かなり重要な要素だと思えますが、それも表層的に感じられてしまいます。
実はタンタたちは……という説明が最後ありますが、突然始まるアドベンチャーパートのようなところで一気に説明が進んでいき、ユーザーとして実感することなくネタバラシされたような気分に。

タンタたちがおかしくなった理由も唐突だし、タンタ・オーラスもなんか急に居なくなっちゃったし……。
『FINAL FANTASY XV』のチームから作られたスタジオということもあり、あの作品同様、途中で時間が尽きてしまったのでは?と穿った見方をしてしまいそう。オーラスの統治していた領地が平原だらけなのは、作れなかったのでは?とかね。

嫌いじゃないですしやりたかったこともわかるのですが、軸がブレていなかったのかとか、表現の仕方がそれであっているのかとか、そういう部分が気になった物語でした。
あと、掘り下げがやっぱり少ないので、ジョーのこといいヤツだって胸張って言えなかった……。もっといろんなキャラクターの掘り下げが欲しかったですね。

バトル・パルクールについて

まず最初に言っておくと、クリア直前くらいになると楽しめるようになってました
逆に言うと、それまではなんだかもやもやするところが多く、特に最初は苦痛に感じることも。でもこれ、体験版を遊んでしまったからかもしれません。

まずバトルについて書くと、『FORSPOKEN』のバトルは遠距離が強く、リスクを取る必要があまりない設計になっています。近距離で戦うことにメリットがあまりない、というか、敵に近づかれたらパルクールで逃げるよう仕向けられているような印象。
ではどのような楽しみ方をするのかというと、多彩な魔法をどんどん使用することで派手に敵を倒していく、という感じ。敵の弱点をうまく突くとダメージが増えるので、相手の様子を見ながら切り替えていくのもお忘れなく。
シナジーがあるものもいくつか存在するのですが、そんなに考えるほどのものではないので、好きなものを好きなだけ使えばOK。

だから、「うまく戦った!」感があまりないんですよね。
こんだけ魔法の種類があるのだから、もっと明確に組み合わせを考えさせるようにしたほうが絶対に面白かったのに……と思わずにはいられません。
また、回避を主体にしているのであれば、ジャストガードではなくジャスト回避を入れて、魔法のCTが回復するような仕様を組み込んで貰ったほうが、リスクを取りつつも素早く敵を倒す感覚、みたいなものを得られたんじゃないかと思っています。

あとはもっと「攻撃食らったら死ぬ」くらいにしちゃえば……と思ったんですが、これは難易度でも調整できますね。

パルクール的な要素はとても気持ちよく面白いのですが、やっぱり最初はできることが少なく感じましたね。世界の広さを感じる箇所が色々あったので、特にできることが少なく感じてしまったのかも。

ただ、最終的には手に入れた魔法で無限にパルクールできるし、大抵の場所は登れるし、水の上も無限に滑れるし、空を浮遊できるしで、できることが多くなり、世界を自由に移動できる感覚になりました。
なのでクリア後に世界を自由に飛び回っているときが一番おもしろかったかもしれません。

猫について

そして猫です。猫。猫がよく登場するのも『FORSPOKEN』のポイントです。

ただの賑やかしではなく、いたるところで猫との絡みを求められます。
ちょっと無理やり入れ込みすぎな気もして、狙い過ぎでは?みたいな気持ちになったりもしますが、猫がいるだけでだいぶいいゲームのように思えるのが猫の素晴らしいところですよね。

あと、少し変わった猫も登場しますし、旅の宿屋みたいなところには猫がたくさん集まってくれたりもします。
魔法パルクール猫RPGと言ってもいいほど、猫とよく遭遇させられるゲームでしたね。

さいごに

悪いゲームではないですし、ある程度進めば移動も気持ちよく、楽しめるようになるんですが、ストーリーについては正直イマイチだったと言わざるを得ない、というのが『FORSPOKEN』への評価です。
ストーリーなんか気にしないぜ、という人だったら普通に楽しめるかもしれません。ただ、戦闘などももう少し料理しきれなかった印象が拭えず、素材は良いのに……というような気持ちになるゲームでした。

風景もめちゃくちゃ新しいわけではありませんが、順当にファンタジーとして綺麗ですし、走り回っていて楽しい場所が多かったです。

フルプライスで買うのはおすすめできませんが、気になっている人は少し安くなった時などを狙って遊んでみると良いかもしれません。

FORSPOKEN(フォースポークン)-PS5

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