こんにちは。譲治です。
軽いゲームで少し遊びたいなと思い、以前購入していた『梅雨の日』を遊んでみました。
最近は腰を据えて遊ぶようなゲームや開発費のかかっているゲームを遊ぶことが多かったこともあり、逆に新鮮な気持ちで遊ぶことができたんじゃないかと思います。
大作ゲームに疲れた人や、少しぼんやりしたい人が、ゆったりするためにプレイするとちょうどよいゲームなのかもしれませんね。
おばあちゃんの家の空気感
小学生やそれ以前の幼い頃、夏休みになると両親の実家に帰り、数日泊まって過ごしたことを憶えています。
今思えばそこまで広いわけではない家ではありましたが、それでも開いたことのない扉や、地下に繋がっていそうな蓋などがあり、その先がどうなっているのかと想像を膨らませていました。
『梅雨の日』はそんな昔の思い出を思い出させてくれるような作品です。
正直に言うと、これをゲームと呼ぶのは少しはばかられます。
ジャンルとしては……アドベンチャーなのか、ウォーキングシミュレーターと言ったほうが適切なのかもしれません。
プレイ時間も30分程度遊んでいれば一通りの要素を堪能してしまえると思います。
ただ、このゲームの良いところは、それらの要素から感じる事のできる「思い出」です。
こういうことあったなぁ、うちの実家はこうなっていたなぁ、というような「思い出」。
それを思い出すための時間を作ってくれるのが、『梅雨の日』というゲームなんだと感じました。
妄想、白昼夢
主人公の少年が朝起きると、今日は雨。
本当だったら遊園地に行く予定だったのに、雨のせいでそれは叶いません。
楽しいはずの1日が特にすることのない憂鬱な1日に変わってしまいます。
でも、だからこそ、普段気にしていなかったあれやこれに気持ちが流れていくのです。
このまま雨が降り続けて町が水浸しになったらどうしようとか、開かない扉の向こうに別世界があったらどうしようとか。
そういった想像を広げていくうちに時間は過ぎていき一日が終わってしまう。
そんな、特別ではない特別な1日。
何故か記憶に残っている1日。
昔懐かしい感情を思い起こさせるには十分なんじゃないでしょうか。
没入感を削ぐ要素
ここまでは雰囲気の良さを褒めてきましたが、それを阻害していると感じた要素がいくつか存在します。
例えば扉の操作しにくさ。
扉を開くのが難しく、急にゲームを操作している感覚が前面に飛び出してきます。
扉や戸棚を開く行為はあまり意識的に行われることがないと思うのですが、操作性の低さのため、急に違和感となって現れます。
また、登場人物のデザインがアニメ寄りなのも別世界の出来事のように感じてしまう一因でした。
いっそのこと以前プレイした『NOSTALGIC TRAIN』のようにキャラクターを登場させない方に振り切った方が良かったかもしれません。
ぶどうのくだりなどを考えると、キャラクターがいなければいないで違和感になっていたかもしれませんが……。
「遊ぶゲームではない」が故に遊ぶ部分とのちぐはぐさが粗となって見えてしまったのかなと思えますし、全体的に要素が少ないが故に少しの違和感が全体を占める割合としては多くなってしまっているように感じます。
目指していた感情の動きの面では、かなり良いフックを持っているだけに、上手く昇華できなかったのが残念です。
さいごに
題材にもなっている梅雨のしとしと降る雨。
そんな雨をぼんやり眺めるかのような時間を過ごすことの出来る本作。
また、懐かしいあの時間を思い出すきっかけになる作品でもありました。
ゲームとしては正直イマイチ……というよりも決して良いものではありませんが、少し落ち着いた時間を過ごすにはこれくらいでもちょうど良いのかもしれません。
遊ぶものではなく、体感する読み物、触れることの出来る空気、というようなもののつもりで、ちょっとした時間を『梅雨の日』で過ごしてみる。
そんな時間の過ごし方が出来る人にだけおすすめできる作品でした。