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実写映画『鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー』の展開や気になる箇所についてあれこれ書き散らかす会


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こんにちは。譲治です。
前回2017年公開の『鋼の錬金術師』についてまとめましたが、それは今回の完結編についての前情報のため。気がついたら構成についてすべてまとめることになっていて、改めて各巻を読み直しながら書き進めたので相当時間がかかった……のですが、前情報が無いとわからないですからね。仕方ない仕方ない。

というわけで、今回は完結編として公開された映画『鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー』について、今回もネタバレ等気にせずに書いていこうと思います。今月は最終作の『最後の錬成』もあるので、自分の中での感想整理も兼ねていきます。

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『復讐者スカー』のお話について

映画『鋼の錬金術師 完結編』 オフィシャルサイト

スカー。
ハガレンの序盤に登場する強敵であり、段々と役割が変化しながらも最後まで登場し続ける……ハガレン重要人物のうちの一人。褐色肌に赤い瞳のイシュヴァール人で、もとイシュバラ教の武装です。スカーは本名ではなく、額の十字傷の情報から軍部が通称としてつけたもので、原作でも本名は最後まで明かされませんでした。

そんなスカーを本作では新田真剣佑が演じたのが本作となります。

新田真剣佑というと『ちはやふる』のイメージが強いのですが、『ジョジョ』では虹村億泰を演じていた過去も。割りと武闘派というかごつめのキャラクターも演じることができる、という評価なのでしょうか。

スカーの初登場といえばタッカーを殺害し、ニーナとアレキサンダーを素材にしたキメラも殺したシーンなんですが、前作の最後の段階で既にタッカー(大泉洋)は死亡済み。他に印象的な戦闘ということで、ジョリオ・コマンチとの戦闘から映画が始まりました。水の中に落ちていくコマンチと追いかけるスカー、そして水の泡が『鋼の錬金術師』という文字になってタイトルへ、という流れはかっこいい。かっこいいのですがちょっと古い感じも。全然きらいじゃないけどね。

イントロ的なスカーの紹介が終わると、ストーリーは1巻の青の団による列車ジャックから開始。いくつか異なる点があり、一番大きい変化はリンの初登場が重なるということ。列車の中で行き倒れているリンを発見し、そこで賢者の石についてあれこれ……。列車ジャックを止めつつも、リン一行とのやりとりもあり、列車から落ちそうになったところに「人柱を死なせるわけにはいかない」とエンヴィーが登場。ホムンクルスだと知ってリン一行は、走り続ける列車から降りたエンヴィーを追うことに……。

原作8巻ではラッシュバレーで行われたやり取りに近いのですが、それを場所を移し列車でやらせる流れ。今回も、エドとアルの状況と新登場のリン一行、そして前回死にかけで逃げ出したエンヴィーの存命とを伝えるための構成変更を行っています。また、その後も大筋ではスカー関連の話を中核とし、2巻のエドとの攻防から12巻のウィンリィの両親とウィンリィ自身へ繋がる復讐劇、そしてスカーとの決戦が描かれる展開ですが、13巻でエドとリン、そしてエンヴィーがグラトニーに飲み込まれるところまでを描く関係でリンとの邂逅を早めた形に。

他にもスカーとの戦闘で壊れた腕を治すためにリゼンブールへ行ったときにホーエンハイムとの再開イベントが発生したり、ホムンクルスを捕まえるためのミッションとマスタング勢のミッションを合わせたりと結構混ぜるところを混ぜてショートカットを測っている印象もあります。

そんなこんなで色々書きましたが、流れをまとめると、11巻→1巻&8巻→2巻→3巻→11巻→12巻→10巻→12巻→13巻という感じ。今回のメインとなるスカーの話とリン一行のホムンクルス捕縛、そしてグラトニーによる誤飲のところまでを、飛ばせるところは飛ばしてつなぎ合わせた、というのが今回の構成方針でしょう。

また、前作同様、というかそれ以上に原作のシーン再現を目標としていることがはっきり伝わる描写も印象的です。例えば、エドとスカーの戦闘で腕を破壊されるところなどは原作のカメラワークなども意識した画作りがされています。他にも各シーン各シーンでセリフや構図にこだわり原作を再現している様子からも、原作を大事にしようとしている気持ちが伝わってきます。

構成は変えつつも、重要なシーンはなるべくそのまま作る
そのために省略するところは省略し、合わせられる箇所や別の説明で減らせる箇所を削っていったのが本作『鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー』の構成と構想だと言えるでしょう。
この考え方は基本的には前作から踏襲されていて、全27巻の原作を3本(1作目はやりきるつもりだったとのことなので実質完結編の2本)にまとめるために、流れが変わってしまうところがあったとしても、うまくつなげて『鋼の錬金術師』としての骨子をしっかり描き切ろうという姿勢を感じます。ただ、それによってラッシュバレーの出産立会の話が消えたり、初代グリードが登場しなかったりと、人によっては悲しい箇所があるのも事実。合計6時間にまとめるのだから仕方ないとは思いますが、悲しいものは悲しいですよね。

個人的には、短い時間にまとめるための取捨選択は興味深く、曽利監督なりの再構成を見ることができたので今回も構成については楽しませてもらったというのが正直な感想です。大胆なカットと継ぎ直し、前回使ってしまった部分を避けて再構築するのは大変だったと思いますし、パンフレットにも再構成するためにどうすべきか色々検討したとあります。良し悪しどちらの感想もあるとは思いますが、曽利監督だったらこう料理する、というのを楽しむことができたのかなと思っています。

気になったところ


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構成について書いてきましたが、それ以外に色々ありまして……。とくに気になってしまった箇所をこちらに改めてまとめていこうと思います。

まずは殺陣について。
上の動画を見てもらえると雰囲気がわかるんじゃないかと思うのですが、戦闘シーンがもっさりしているというか……。上でも書いたように「原作のシーン再現を目標としている」ようなんですが、それが原因となっているようにも感じられます。というのも、マンガの1シーン/1コマを再現するために、そこに至るための動きがぎこちなくなってしまったり、マンガだから許される間が映画になったことで違和感になってしまったような印象。かっこいい戦闘シーンではなく、決まった動きをしているだけというところから来るイマイチ感なのかなと。

あとはCGですね。
前作では、序盤に予算をガンガンかける一点集中型でクオリティを上げていて、個人的には高評価だったのですが、今作ではそのようにはなっていません。派手な戦闘が多くなったり、イシュヴァール殲滅戦の話も出てきたりでいろいろなところでCGを使わざるを得ず、結果的に全体的にイマイチな出来になってしまったように感じました。キンブリーが出てくる回想シーンなどは白バックに明らかに抜きの甘いキンブリーが登場し、エフェクトでごまかしてもごまかしきれないチープさ。CGでいうと完結編2部の『最後の錬成』のほうが色々規模が大きくなりそうなのでもっと心配になります……。もしかしたらそっちに予算を回した関係で今作の演出のクオリティが上がりきっていないとかあるかもしれませんが、1本の映画として見たときに気になる箇所が多かった……。

それともう一つ、状況と描写の違和感とでも言いましょうか。
例えば最初にスカーと遭遇して戦闘を行うシーン。ここでエドが強い恐怖を感じる展開なのですが、原作と違って映画版では前作ですでにホムンクルスとの戦闘も経験済みなんですよ。モノ壊せるやつが襲いかかってくるくらいでそんなに動揺するか?と。あと、リンがブラッドレイを化け物と評するシーンでは、舘ひろしのアクションはそこまで人間離れしていないもの。そのため、リンが驚いているのが納得できない。殺陣の話や構成の話でも触れましたが、どうしてもそれらの要素の絡み合いや表現にズレが生まれてしまい、納得感がなく、違和感が出てしまう箇所がいくつかありましたね。原作の表現を再現するのを重視していたとはいえ、もう少し調整できなかったのかなと思ってしまいました。

リン一行について


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イマイチなポイントだけでなく、良かったところについても触れておきましょう。構成や志については書いたので、残しておいたリン一行についてです。

リンを演じるのは渡邊圭祐。仮面ライダージオウから始まり、群青戦記などにも登場する俳優です。飄々としたリンの雰囲気、そしてその裏にあるしっかり一本通った使命感を演じるのが上手で、リンらしさを感じることができました。また、ランファン(黒島結菜)とフー(筧利夫)についても同様で、それぞれの雰囲気をしっかり表現されていたと思います。

まぁ逆に『シン・ウルトラマン』にも登場していた山本耕史が演じるアームストロングなんかは結構きつかったりしましたけどね……。というかやっぱり言われている「コスプレ感」が拭えないという問題があって。山田涼介なんかは結構いい感じだと思うんですが、それ以外がなかなか……難しいですね。それこそ、邦キチにもあったように舞台とかそういう方が……というのもわかってしまう。
改めて思い返すと、スカーの演技とかわざとらしさが強いし、掃けるところとかは袖に去っていく雰囲気だったし、舞台のが良い説は実際ありそう。

今後の展開について


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最後に『最後の錬成』でどのような展開になるか、の予想を書いていきます。

既に言われている通り、原作の最後まで描くというのは決まっているので、最後の展開は概ね原作通りになるでしょう。腕が戻って戦うシーンとか、ホーエンハイムが背中を支えられながらホムンクルスの攻撃を受けるシーンとかも映像に含まれてましたからね。
また、その前、オリヴィエ・ミラ・アームストロングなどブリッグズ勢も登場している様子が伺えます。スロウスも登場していましたし、北方の話はそれはそれで進めることになるようです。

『復讐者スカー』の最後から考えると、13巻の話から始まって、お父様との邂逅、リンのグリード化の流れは安定。キンブリーも何度も出ていたので登場することを考えると15巻の過去話はやりそうなものですが、今作で少し触れているので端折る可能性もありそうです。むしろ冒頭でキンブリーの釈放あたりを描くとかも考えられそう。で、お父様の話が終わってからブリッグズ編に入って、過去話と逆転錬成陣の話(シャオメイがあれこれしてる様子が動画にもあった)という感じですかね。
既に使ってしまった要素から考えると、マルコーは死亡したので当然出てきません。なので殺された体にして云々とか、一緒にスカーの兄の錬金術書を読み解くとかは無いですね。人形兵も前作に登場したので削りそう……だと思っていたら動画にはそれっぽいシーンがあるんですよね。
あとはプライドとの話をどこまで描くかが気になっていて、セリムが登場しているので触れないわけはないのですが、アルと一緒に閉じ込められるところもやるのかは怪しい気が……。でもキンブリーとの絡みとか、グラトニーのその後にも関係するのでやるか……。エンヴィーを焼き尽くすくだりはあると信じているので、本郷奏多がまた焼かれるシーンが楽しめるんじゃないかと思っています。

さいごに

いいところについて触れると言いつつも最終的にイマイチだった箇所の話になってしまいました……。ただ構成などは一見の価値があると思っていますし、掲げている目標自体は悪いものではないと考えています。ただ、うまく行っていない箇所が目についてしまって、評価は絶対に下がってしまうよなとも。赤点ではないんだけど0点をつけるほどだめでもない。個人的には評価できるポイントが色々あるのと、最終的にどうなるのか、どうやって描いていくのかが気になっていることもあり、『最後の錬成』まで見届けようと思っています。


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それはそれとして、ハガレンのスマホゲームが気になってます。夏配信予定とのことなので、配信されたら遊んでみたいですね!

 

鋼の錬金術師