
『Florence』というゲームがある。
スマートフォン版が2018年に発売されたこのゲーム……知ってはいたし、雰囲気が良いのでプレイしたいと思っていた。
定期的に話題にあげている「The Game Awards」ではベストモバイルゲームを受賞しているし、他にも様々な賞を受賞している。
だがお恥ずかしいことに、後回しにし続けて結局7年もの間放置していた……。
そんな典型的な積みゲーとなり、記憶の片隅に隠してしまっていた本作を思い出したのは先日のこと。
『ダレカレ』をプレイした際に「『Florence』にインスピレーションを受けた」という話を見て、「あ、やりたいと思ってたやつ!」と急浮上。
Steam版を購入してプレイして……「会話を体験」できるということの面白さを実感した。
なので、この会話体験などのシンプルな操作で得られる体感について、思ったことを書いていこうと思う。
きっかけなどの都合上『ダレカレ』を引き合いに出す箇所があり、(そこまで甚大ではないと思うが)ネタバレ的な要素もあるのでご注意を。
Florenceとは
まず最初に『Florence』について簡単に説明をしようと思う。
本作はMountainsによって開発された、もともとはスマートフォン向け、その後SteamやSwitch向けに発売されたビジュアルノベル。
主人公であるフローレンス・ヨーの夢と恋と成長が物語として描かれる。
文字による説明はほぼなく、イラストや操作を通じて物語に触れる形式となっているため、読み物が苦手であっても問題なくプレイすることができるだろう。
ゲームとしてのプレイ時間は1時間未満。
なにかの合間にプレイすることもできるくらいのコンパクトなゲームとなっている。

ゲーム自体もシンプルで、「何かをクリックする」「何かをドラッグする」という程度。
もともとスマートフォンに向けたもので、タップなどの操作を意識して開発されたことがうかがえる。

操作がシンプルであるというのは先日記事にした『ダレカレ』に繋がる部分でもあるだろう。
あちらもボタンをクリックするか引っ張るくらいの操作だけでゲームとして完結させており、悩むことなくプレイすることができるようになっていた。
そして、そのシンプルな操作がそのまま体験に繋がるようになっていた。
後発である『ダレカレ』の方が体験との結びつきは強かったように思うが、そのきっかけになったのが『Florence』なので当然のことだと言えるだろう。
会話を体験する、ということ
個人的に最も良い要素だと思ったのが、ふきだしのパズルだ。
「ふきだしのパズル」というだけの説明だと、ただのパズルのように感じられてしまうだろうし、そのシーンだけを切り取っても体感は伝わらないと思うが、これが心情や物語と繋がっていてとても良かった。

チェロ奏者の男性、クリシュと出会ったフローレンス。
最初はピースの数が多く、組み合わせるのに時間がかかってしまう。
しかし会話を続けるうちに段々とピースの数が減っていき、パズルとしては簡単になっていく。
ゲームとして考えれば、進行に合わせて難易度が上がる方が想像しやすい。
クリアしたのだからもっと難易度を上げよう。そう考えるのがパズルゲーム的なセオリーだから。
ただ、これは会話だ。
そして、人間同士の関係性の話でもある。
初対面やまだ関係性が薄いときは「何を話そうか」「どう伝えようか」と考えることが多くなるだろう。
しかし、相手の人となりを知っていき、会話の回数が増えるにつれ、考える時間は短くなり、会話が弾むようになっていく……。
そんなコミュニケーションをパズルを通じて体験することができる、というのが『Florence』の良いポイントなのだ。

ちなみに、『ダレカレ』における会話パートでも近い体験をすることができる。
会話の流れがシンプルになっていき、パズルが簡単になっていく。
線が角ばっていたのが丸みを帯びていくことで、気を許している感じも伝わってくるよい演出だと思う。

この感情を表す要素は『Florence』にも登場する。
言い合いになるシーンでは、パズルのピースの形状が変わり、トゲトゲしくなっていく。
語気や口調が強くなっていくような雰囲気がパズルのピースからも伝わってくるようだ。
会話という要素だけを切り取っても様々な方法で表現され、文字を使わずとも(なんなら上部の絵を見なくても)その時の心情が伝わってくるというのが本当に素晴らしい。
会話を読むのではなく心情を読むという、なかなかほかでは味わえない体感だったと思う。
色々と説明してしまったが、未プレイだったらぜひ上記の場面を意識してプレイしてみてほしい。
さいごに

何か難しいことを成し遂げるようなゲームではないし、誰かと競い合って練度を上げることが目的のゲームでもない。
平凡な日常の中で出会った男女を追うだけの物語だ。
ただ、ゲームという媒体を使うことで、実際にそのときの心情を「操作」によって体験できるというのが本作の一番の魅力なのだと感じた。
それは間違いなく『ダレカレ』にも受け継がれているし、他のゲームにもエッセンスが流れ込んでいるように思える。
ただ読むだけでなく、プレイヤーが操作することで心情を感じ取っていく。
様々な方向性はあると思うが、ビジュアルノベルとして最も素晴らしいデザインの1つであることは間違いないだろう。
ぜひ実際に体験してみてもらいたい。