こんにちは。譲治です。
漫画原作の実写映画を見るのが好きなこともあり、「ブルーピリオド」の実写版映画を見てきました。
面白い部分はあったのですが、もったいないなぁと感じることの方が多く……。
そのあたりを感想という形で書いていこうと思います。
ブルーピリオドとは?
なんか実写映画記念の表紙のやつしか見つからなかった……。
「ブルーピリオド」は山口つばさによる、美術を学ぶこと・志すことを主題とした青春群像劇。
主人公の矢口八虎は、学業は優秀なものの、タバコや酒もする不良。
仲間とつるんではオールするような毎日だったが、常に物足りなさも感じていました。
そんな八虎が、ある日美術室で見た一枚の絵に惹かれ、美術部に入部。
様々な苦難を乗り越えながら、美大への受験を目指すことになります。
2020年にはマンガ大賞を受賞。
2024年8月現在は15巻まで刊行されており、藝大に入り2年となった八虎の物語が進んでいます。
実写映画版「ブルーピリオド」について
実写版で描かれるのは藝大受験まで。
つまり高校生の期間の話のみとなります。
原作でいうと6巻の最後までですね。
原作の最初の盛り上がりといえば藝大受験になるので、ここが目標地点になるのはとてもわかりやすい。
ただ6巻分すべてを描くのは時間的に厳しいので、色々と削って1本の映画としています。
たとえば、桑名や橋田との絡みは本当に最低限ですし、世田介くんとは予備校以上の関わりがなく、初詣には行きません。
学校の先生とのやりとりも少ないですし、予備校最初のデッサンのときだけ出てくる先生もいません。
青い渋谷を描いて、そこから一気に美術の世界へ入っていって、美術部だけじゃなくて予備校にも通い始めて、世田介くんと比較して落ち込んでたらユカちゃんに励まされて……。
藝大受験の重要な流れは残しつつ、要素を減らしているという感じです。
ただそれでも要素が多いのか、シーンの多さから来る駆け足感やシーンごとの満足感の薄さは拭えません。
……って書いたけど、良いシーンが多すぎるのが悪くない!?
当然だけど青い渋谷を描くところは必須だし、「悔しいと思うならまだ戦えるね」もあるし、先輩と絵を描きあうシーンもあって、先輩の絵を見に行ったらメモを残してこなきゃだし、「俺にとって縁は…」「金属みたいな形かもしれない」のシーンは絶対必要、「その笑い方されるとこれ以上入ってくんなって言われてるみてえで虚しくなるんだよ」ってところも大事なシーンだし、当然受験のところはしっかりやらなきゃいけないし、自分の裸を描くシーンも……。
これ全部を映画でやろうとしたら、そりゃ時間足りないわ。
映画でやるんだとしたら、自分の解釈、自分なりの答えを絵に描けたところまでで前半として、残りを受験編として後編にする2本立てとかじゃないと厳しそう。
受験の発熱の原因を龍二との海の話に絡めたりと、複数の要素をかけ合わせることで展開を調整してはいるものの、それだけだと足りないくらいいいシーンが多いんですよね。
そんなわけで、各シーンをやった結果、全体的にいい話なんだけどわかりやすい盛り上がりポイントが欠けたストーリーになってしまった、と感じましたね。
全部ガッツリやるんだったらドラマとかが最高なんですけどね。
ちなみに、映像演出という話で言うと、渋谷の絵を描くところの浮遊感というか明け方の気だるさというかが描かれるシーンはすごい好きでした。
だんだんと明るくなっていくところが、八虎の目の前が開けていく感覚ともリンクしているようで、心地よさを感じられる映像でした。
個人的には縁のところは割と普通なので、こちらの方が好きですね。
さいごに
映画として特別つまらないわけではないですし、全体的に丁寧で良い作品だとは思うのですが、「どのシーンが良かった?」と聞かれると答えられる場所が無いという凹凸の少ない映画になってしまったように感じました。
途中でも書いたように、この作品を映画1本で描ききるのは厳しかったんじゃないかなとも思いますね。
良いシーンが多く、同時にわかりやすい目標達成の少ない作品でもある「ブルーピリオド」という作品は、もう少しじっくり語る方があっているのかもしれません。
そこまでおすすめしにくい映画ですが、満遍なく押さえているので「ブルーピリオド」を知らない人が知るきっかけとしてはちょうどよい作品とも言えるかも?
役者などの興味のあるところから触れて、原作を読み始める流れになったら良いなと思います。